昭和33~34年初版発行
52年前、東京タワーが完成した年の発行である。 このころ戦後の影と高度成長期への昇り口とが重なった時期であったと思う。 その数年後、銀座、築地、日本橋からそう遠くない中央区湊に住んでいた私は、近所の空き地でドッジボールをしたり駄菓子屋で買い食いをしたり、佃島、小田原町、明石町など遊び場とし、プロ野球への無関心を除けば、平均的小学生であった。
そういう訳で、こういった全集とは縁のない生活であった。 現在の私は、「西遊記」や「ユリシーズ」などが含まれていれば、興味ありなのであるが、残念ながら丸富堂の在庫では、第1巻の「西遊記」は無いし、ジョイスはこの全集に含まれて居ない。
第23巻「シャーロク・ホウムズ/怪盗アルセーヌ・ルパン」など題名からして現在と異なる。 第33巻「阿Q正伝」は、竹内好氏ではなく増田渉氏の翻訳である。 私は魯迅作品を竹内好訳でしか読んだことがないので、新鮮かもしれない。
第40巻「西鶴名作集/近松名作集」は翻訳ではないが、編者により違いがあるのであろうか。
「クウォーウァーディス」、「エジプト人」など理科系人間は聞いたことがないが、こういった作品に出会えるのも全集のいいところである。 当時の編集者が「これを読め!」と言っているのである。
50年を経て、かなり痛んでいるが、一部を除き読むのに支障があるわけでは無い。 翻訳物は、その後の翻訳(最新の翻訳で、「読みやすくなった」「現代によみがえった」と言われるものなど)と読み比べるのも面白いであろう。 「ユリシーズ」が含まれていればと思うのだが、猥褻との批判や出版禁止騒動があって、一般向けの全集には含まれなかったのも当然かもしれない。
在庫は全巻揃ってはいないが、丸富堂をご利用いただければ幸いである。