「アンティキテラ 古代ギリシャのコンピュータ」ジョー・マーチャント[著]/木村博江[訳]
アンティキテラ島の入り江で発見された沈没船の積荷であった大理石やブロンズの像と共に引揚げられた謎の物体の物語です。
謎の物体が何であるか、または現在までに、どのような解釈がされているかは、これから本書を読む方のお楽しみとしましょう。
この本を手にとって、口絵写真からパラパラとめくったとき、「これは読まねば」と引き止めたのが、口絵写真の次のページにあった、A.C.クラークの言葉、
「二千年以上まえの物と推定されるアンティキテラの機械。そこに使われているテクノロジーは十八世紀以降のものとしか考えられない水準である。---後略--」
でした。 A.C.クラークファンとしては、彼のことばが一言でもあれば読まねばなりません。
1900年の発見から、2006年の一応の総括までの106年間の探求の物語です。「アンティキテラってなにさ」という、A.C.クラーク同様に「わくわく」しながら読み始めるが、なかなかアンテキィテラは登場しません。19世紀のギリシャの海綿採りからはじまり、前半はアンティキテラの発見までが語られ、後半になって「アンティキテラの機械」とその虜になった3人研究者と1チームについて、それぞれの時代のそれぞれの研究成果が紹介されます。
前半の沈没船や積荷の積出港・目的地の推理、発見品が収納された博物館の対応、潜水技術の発達、ジャン・クストーもアンティキテラに興味を持ったこと、などそれぞれの方面で興味深いことではありますが、「アンティキテラはまだかいな」と、読み進めねばなりません。
後半では、目視で表面を観察することしか方法が無かった時代、X線で透視できるようになった時代、CTスキャナで立体的に内部を解析が可能になった時代、の成果が順番に明らかにされていきます。
しかし、理解は難しい。 天文学に狙いをつけた研究者が捏ね繰り回す数字は、私の人生には一切関わりの無かったものばかりです。
使用されているギヤの枚数を天文学上の数字--たとえば、1年は365.25日なので葉車の歯数にする場合、0.25があらわせない。そこで4年を1周期として14608を使用する、の様な変換(太陰暦の古代ではもっと複雑なようです)、月の運行を数字で表したり--から解釈するところなど、一所懸命読まねば、理解できません。私はチョット理解できませんでした。
機械に詳しい研究者は、差動ギヤの構造を、古代遺物の透視映像に発見しますが、「説明がわからん」と言いたい。 もちろん差動ギヤは自動車に使われている位は知っていますが、自動車の場合は、駆動軸が1つで、2つの軸に動力を伝えるものです(よね?)。 アンティキテラでは逆に、駆動軸が2つで1つの軸に動力を伝えるようですが、言葉だけではわからん!
やはり考古学も、広い知識と閃きがないといけませんね。 A.C.クラーク氏同様に「アンティキテラの機械」に興味を感じますが、「もっと歯車を」(研究者たちの合言葉)と同時に「もっと判りやすい解説を」と言いたい。